就業規則作成のポイント
常時10人以上の労働者を使用する事業場では必ず就業規則を作成しなければなりません。
また、労働者が10人未満であっても、就業規則を作成することが望まれます。
作成した就業規則は、所轄の労働基準監督署に届出ましょう。
ポイント1
事業場で働く労働者の数が、時として10人未満になることがあっても常態として10人以上であれば、事業主は必ず就業規則を作成しなければなりません。
この場合の「労働者」には、いわゆる正規社員のほか、パートタイム労働者や臨時のアルバイト等すべての者を含みます。
また、労働基準法等諸法令と就業規則の内容及び実際の労働条件等があっているか、常に見直しをしていく必要があります。
見直しの結果、変更をした場合においても、届出が必要となります。
常時10人以上の具体例 | ||
正規社員の人数 | パート、アルバイト、嘱託人数 | 作成届出義務 |
10人 | 0人 | 有り |
6人 | 4人 | 有り |
2人 | 8人 | 有り |
ポイント2
就業規則には、パート・アルバイトを含む、すべての労働者についての定めをすることが必要です。
就業規則は事業場で働く労働者の労働条件や服務規律などを定めるものですので、そこで働くすべての労働者についての定めをする必要があります。
例えば、パートタイム労働者のように勤務の態様等から通常の労働者と異なった定めをする必要がある場合には、通常の労働者に適用される就業規則のほかに、パートタイム労働者等一部の労働者のみに適用される別個の就業規則(例えば「パートタイム労働者就業規則」)を作成することとなります。
就業規則の記載方法としては、
①別個の就業規則の適用を受ける労働者は、一般の就業規則の適用を除外すること。
②適用除外した労働者に適用される就業規則は、別に定めることとすることを明記することが必要です。
ポイント3
就業規則には、労働基準法で絶対に記載しなければならない事項が決められています。
就業規則には、次の事項などを記載しなければなりません。
1 | 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては、就業時転換に関する事項 |
2 | 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この項において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切及び支払の時期並びに昇給に関する事項 |
3 | 退職に関する事項(解雇の事由を含む) |
4 | 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項 |
5 | 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項 |
6 | 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項 |
7 | 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項 |
8 | 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項 |
9 | 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項 |
10 | 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項 |
11 | 以上のほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項 |
これらのうち、1~3の事項はいかなる場合でも就業規則に必す記載しなければなりません。これを絶対的必要記載事項といいます。また、4~11の事項は、定めをおく場合には必ず就業規則に記載しなければなりません。これを相対的必要記載事項といいます。
なお、これら以外の事項についても、その内容が法令又は労働協約に反しないものであれば任意に記載することができます(任意記載事項)。
ポイント4
就業規則の内容は、事業場の勤務、労働実態に合ったものとしなければなりません。
就業規則は、当該事業場の労働条件や職場で守るべき規律などを定めるものであり、就業規則で定めたことは、労働者と事業主の双方を拘束することになりますので、その内容は勤務、労働実態に合ったものとしなければなりません。
よく他社の就業規則をそのまままねて就業規則としている場合も見受けられますが、そのような方法で就業規則を作成しますと事業場の実態とそぐわないものとなり、就業規則としての機能を果たさないばかりか、かえって労使間のトラブルのもとともなりかねません。大企業の就業規則まねて、そのまま中小企業の就業規則にしてしまうケースは実態にそぐわないことになります。
就業規則の作成に当たっては、現在職場で実施している労働者の労働時間、賃金等の労働条件あるいは職場規律などについての制度や慣行を整理し、それを基にしながら、改善したい点も含めて内容を検討することが重要です。まず、現状の把握から始めましょう。
また、労働条件等は時とともに変わっていくのが普通ですから、就業規則を作成した後にも、必要に応じて見直しを行い、常に実態に合ったものとしていく必要があります。
なお、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則に定めた事項に変更があった場合には、それに合わせて就業規則を変更し、所轄の労働基準監督署に届け出なければならないこととされています。
ポイント5
就業規則の内容は、労働基準法又は労働協約に反することはできません。
就業規則は、その内容が労働基準法又は当該事業場について適用される労働協約に反することはできません。これらに反する就業規則は、その部分については無効となります。
労働基準法その他関連法令の基本的な知識を把握されてからの作成をお勧めします。法改正が頻繁にありますので最新の法令でチェックする必要があります。
ポイント6
就業規則を作成、変更する場合は、労働者の代表の意見を聴かなければなりません。
就業規則は、事業主が作成しますが、労働者の知らない間に、一方的に苛酷な労働条件や服務規律などが就業規則で定められることのないように、労働基準法では、就業規則を作成、変更する場合には、労働者の代表の意見を聴かなければならないこととしています。
労働者の代表とは
この場合の意見を聴く労働者の代表とは、会社の本店、支店等のそれぞれの事業場ごとにみて、
① 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合
② 労働組合がない場合や労働組合があってもその組合員の数が労働者の過半数を占めていない場合には、労働者の過半数を代表する者
をいいます。
労働者の過半数を代表する者とは
「労働者の過半数を代表する者」とは、その事業場の労働者全員の意思に基づいて選出された代表をいいます。
過半数を代表する者は、次のいずれにも該当しなければなりません。
①労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
②就業規則について従業員を代表して意見書を提出する者を選出することを明らかにして、実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者であること。
<選出方法の例> |
・ 挙手を行い、過半数の労働者の支持を得た者を選出する方法 |
・ 投票を行い、過半数の労働者の支持を得た者を選出する方法 |
・ 各職場ごとに職場の代表者を選出し、これらの者の過半数の支持を得た者を選出する方法 |
・ 候補者を決めておいて投票、挙手、回覧によって信任を求め、過半数の支持を得た者を選出する方法 |
なお、 次のような方法は認められません。
・ 使用者が一方的に指名する方法
・ 一定の範囲の役職者が互選により労働者代表を選出する方法
・ 一定の役職者を自動的に労働者代表とする方法
・ 親睦会の代表者を自動的に労働者代表とする方法
また、事業場全体の労働条件などについて管理する立場にある者(人事・労務部長、人事・労務課長など)は、上記(1)に該当しますので労働者代表としての適格性を有しませんので気をつけましょう。
意見を聴くとは
「意見を聴く」とは、文字通り意見を求める意味であって、同意を得ること、協議を行うことまで要求しているのではありません。また、事業主としては、法的にはその意見に拘束されるものではありません。
しかし、労働条件は、労使対等の立場で決定するのが原則ですので、一方的に決めようとするのではなく、労働者代表の意見については、できる限り尊重することが望ましいといえます。また、こういう関係を確実に築いていくことで、労使一丸となった会社経営の途が開けていけるものと思います。
ポイント7
就業規則は、労働者の代表の意見書を添付して、労働基準監督署に届け出なければなりません。
常時10人以上の労働者を使用する事業場において、就業規則を作成、変更した場合は、これに、ポイント6で説明した労働者の代表の意見を記し、その者の署名又は記名押印のある書面(意見書)を添付して、本店、支店等の事業場ごとに、それぞれの所在地を管轄する労働基準監督署に届け出なければなりません。
ポイント8
作成した就業規則は、各労働者に配布したり、各職場に掲示したりするなどにより労働者に周知させなければなりません。
就業規則は、労働者の労働条件や職場で守るべき規律などを定めたものですから、労働者全員に知らせておかなければ意味がありません。できれば労働者の一人ひとりに就業規則を配布することが望ましいのですが、少なくとも各職場の見易い場所に掲示するか、あるいは労働者がいつでも見ることができるような場所に備え付けるなどの方法により、労働者に就業規則を周知させなければなりません。
周知方法として、就業規則をパソコンのデータ内に記録し、各作業場に当該記録の内容を常時確認できるパソコンを設置し、労働者が必要なときに容易に見ることができるようにしておくことでもよいこととなっています。
特に、新たに就業規則を作成し、内容を大幅に変更した場合には、その内容がすべての労働者に確実に、かつ速やかに周知されるようにすることが必要です。
チェックポイント1
法定の記載事項が定まっているか。
チェックポイント2
法令(労働基準法)に違反する規定が含まれていないか。
チェックポイント3
就業規則を届ける場合に「別に定める」としている付属規定が定まっているか。例えば、パートタイマー就業規則など。
チェックポイント4
「就業規則(変更届)届」と「意見書」は揃っているか。所定の箇所に署名、押印があるかどうか。
チェックポイント5
会社控があるか。
監督署への届は、正副2部(提出用と会社控)を作成して届出となります。
会社控に受付印を押されて、返却されます。